読書に対する先入観を変えてくれる一冊「遅読家のための読書術」
パソコン、スマホを開けば大量の情報がとびこんでくるネット社会。
ネット以外にも、情報や知識を取り込むひとつの手段として読書もあります。
本は筆者が参考文献などを基につくり、編集もはさまれているので情報の正確性は高いもの。
しかし読書と聞くと、
最初からしっかり読むのはしんどい……
読んだ内容をすべて覚えないといけないプレッシャー……
子どものころから自然と持つ強固な先入観により、読書=ツラいものというイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか?
本書「遅読家のための読書術」(印南敦史 著)では、読書を学びに変えないといけないプレッシャーから解放し、本を読む楽しさを気づかせてくれる一冊です。
年間700冊を読み、ほぼ毎日Webで書評を書いている著者から読書方法を学び、多くの本を読んで読書の習慣を定着させることができれば、それだけで人生が豊かになるはずです。
読書に対する先入観はくせもので、僕も読書をやり始めた頃、読んだ内容を覚えないといけない先入観に縛られ、ノート見開き2ページにびっしり気になったところ、感想などを書いてすべてを覚えようとしていました。
そんな読書を毎日続けた結果どうなったか。
読書が嫌になりました……。
多少は内容を覚えれるものの、普通に読むより少し記憶に残る程度で、毎日ノートを書くためだけに生活しているようになり、こんなにツラいものなのかと独り落ち込んでいました。
しかしそんな絶望のなか、本書に出会って多読の方法を学び、こうしなければいけない読書の呪縛から解放されました。
肩の力を抜いて楽しく本を読む。そんな読書の原点に立ち返る一冊です。
本を読むのがツラくならないようにするためには
読むことに慣れていないときは、読むスピードが思うように速くならないことから、読書がツラく感じたり、イヤになったりしてしまいます。
なぜ遅くなるのかを考えて対策していくのが重要。
本を100%覚えようとせず、1%にめぐり合えばOK
読んだこと、すべてを覚えようとしなくてもいいという考え方が大切。
子どもの頃から体に染みついた最初から最後までとおして読み、内容をもらすことなく覚えないといけない呪縛はなかなか消せません。
覚えているのはせいぜい1文とか2文、あるいは「なにが書かれていたかはあまり思い出せないのが、『とてもいい本だったという事実』だけは覚えている」というのが現実的なところではないでしょうか?
ここからもわかるとおり、読書の本当の価値は、書かれていることの「100%を写しとる」ことではなく、価値を感じられるような「1%に出会う」ことにあります。
~遅読家のための読書術より~
僕も大人になってから本を読み始めたときは、1冊に何時間も、何日もかけて読み進めて、必死に内容を覚えようとしました。
しかし、読む集中力、記憶力にも限界はあるもので、心を揺さぶられたところ、新たな気づきを得られたところは部分的に覚えているものの、すべてを覚えることは不可能ですし、本を読むこと自体に嫌気がさしてしまいました。
人は忘れる生きもの。
1冊からすべてをしぼり出そうとせず、10冊あれば1冊から1%ずつ学びを集めて10%にする。
少しづつ積み重ねていく心持ちのほうが、気楽に読書を続けられるはずです。
本をためこもうとしない
あれも気になる、これも気になると本を買うだけ買って読むタイミングを逸して、本のタワーを形成してしまう。
いわゆる積読。
ネットの情報はさっと記事を斜め読みできるのに、本になるとなぜかまじめにすべて読もうとしてしまいますよね。
普段から本を読みなれている人には問題ないかもしれませんが、1冊読むのに何日もかけてしまう人にとっては、ストックよりも頭のなかに内容を流し込むことが重要。
本を読み込みしっかりインプットしないと!
と思っていても、積読の山をみるとモチベーションが下がってしまい、いつまでも読むことができません。うーん、どうしようと悩むくらいなら、さっと読んでどんどん読み進めてしまうのが吉。
僕も積読してしまい、次から次へと電子書籍や図書館の本に手を出してしまうので、山が中々なくなりません。
本は読むためにあるもの、という意識をしっかり持って興味がなくならないうちに読み進めていきたいところ。
より良い読書で毎日の習慣に
著者の印南敦史さんは年間700冊を読む読書家。
ここまでは難しいかもしれませんが、週に4冊読めれば年間約50冊、月に10冊読めば年間120冊を読んだことになります。これだけでもかなりの読書家に感じませんか?
続けるためには毎日の習慣にしてしまうことで考えずにできるようになります。
読書のコツをつかみ、読む楽しさを感じることができれば自然と習慣になるはず。
早く読める本を多く読む
単純明快で、速く読める本を多く読めば自然と冊数は増えていきます。
ビジネス書、自己啓発書などは章ごとに内容をまとめてくれているので、読みたいところを重点的に読むことができます。
目安としては、「速く読める本」が9割、「速く読む必要がない本」が1割の比率。この「9対1」の割合を意識しながら、読む本を選ぶようにしてみてください。
~遅読家のための読書術~
例えば小説など、登場人物の心境を考えたり、作品の世界に没入したりする作品は、世界観を味わうために読むので、速く読む必要がない本。
毎日小説を1冊読むのは、なかなか難しいですよね。
そこで、ビジネス書を中心に読んでいき、たまに小説を読んで自分の知見を広げていくことで、読書を楽しみつつ本を読み進めていく方法がおススメです。
今まで読まれることもなく、本棚に同化していた本をどんどん読み終わっていく感覚は、なんといっても気持ちいいし、読書を習慣化するモチベーションになります。
1日1冊読書も夢じゃない!
引用文を書き出す
読書は読むだけで終わらず、ノートに書き出したり、SNSに感想を書いてみるアウトプットをすることで、記憶に定着しやすくなります。
でも、どう書いたらいいかよくわからない……。
そんなときは、本から気になった部分をそのまま書く「引用」が有効です。
引用を書き出すことで、自分がどこで心を揺さぶられたかをあとで確認でき、忘れづらくなります。
(中略)引用することによって、その本のどこに心動かされたのか、どんな文章が気になったのかが可視化されます。
「じっくり読む」よりも、文を書き写したほうがその部分をしっかりと味わうことができますし、忘れづらくもなるでしょう。もっといえば、書き写しているのだから忘れてしまっても大丈夫なのです。
~遅読家のための読書術~
僕も本を読んだあとに、感想や気づきのあった部分をノートにまとめています。
そのとき感じたこと、考えたことを自分の言葉で書き綴ると、あとで読み返した自分が内容をよく理解できないことがありました。
引用文を書いておくと、見返したときわかりやすく、読んでいるときの感情もなんとなく思い出せます。
さらに、本書で紹介されている「1ライン・サンプリング」という方法は、ノートに書きだした引用文章の横にページ数を記入しておくもの。
こうすることで、もう一度読み直して深堀りしたいときに、すぐ対象のページにとべるので便利です。
わかりやすく、可視化できる。引用のメリット。
はじめに、目次をしっかり読む
本の、
・はじめに
・目次
を熟読することで、本を読むスピードが変わってきます。
筆者も読者がここを立ち読みすることを知っています。この部分が魅力的であれば、読者が本を買ってくれる確率が高まる。だから筆者としても、「はじめに」で思いを端的に伝え、読者に「読もう!」という気になってもらおうと力を入れています。
~遅読家のための読書術~
上記の引用は、「はじめに」についてです。
この部分でどんな内容かを大まかに理解でき、続けて目次を読むと、この本の主張がなんとなくわかってきます。
まったく事前情報がない状態で読み始めるよりも、予習できている状態で読む方が頭に入ってきやすいです。
準備することで、読むスピードが格段に変わってくる。
おわりに
読書を習慣にしたり、もっと多くの本を読めるようになるには、より多くの本を読むこと。
これに尽きるのではないかと思います。
たくさんの本を読んで、たくさんの本にふれることができれば、本への苦手意識もなくなるし、読むスピードも自然と上がってきます。
僕も恥ずかしながら、社会人になりまったく読書をしていませんでしたが、30代になり少しづつ読書していき、1日1冊のペースで読書できています。
本書を読み、「何かのための読書」から「たくさんの本を読む」というプロセスを楽しむことに方向転換できたのも、読書を継続できている大きな理由のひとつです。
読むのが遅い……。
もっと本を多く読めるようになりたい。
そんな方におススメの一冊。
最後までお読みいただきありがとうございました。